アメリカにとって銃はなくてはならないものです。銃を禁止したら、それはもはや米国ではありません。銃に象徴される武力は、アメリカそのものです。「平和は力によって獲得される」という考え方です。そしてそれにタダ乗りしているのが日本なのです。
機会が平等に与えられているアメリカにも上下関係があります。例えばスクールカーストです。ジョックス(Jocks)を頂点としたピラミッドです。権力者も同様です。テック企業の創業者などではなくて、検事や知事、金融機関のトップ、上院議員の事です。
面長で鼻筋が通っており、額が張り出した典型的なアングロ・サクソンの風貌です。彼らの妻も、判で押したように青い目のブロンドです。出自だけではなく、容貌が美しくスポーツ万能で弁舌が上手くなければ、その後の出世は見込めません。そうであるならば、何の取り柄も無い者は自動的に敗残者となってしまうのでしょうか?
いいえ、そうではありません。そんな米国にも安定装置があるのです。家族を中心とした排外主義です。ヨーロッパで食うや食わずだった貧民でさえも、アメリカに来ることにより、広い土地と家、そして自由を手に入れる事ができたのです。途方もない金持ちになる事だけが、アメリカン・ドリームなのではありません。
具体的な例を挙げてみましょう。以前に「ものみの塔聖書冊子協会」が発行する書籍や冊子を読んでみたことがあります。「あなたは地上の楽園で永遠に生きられます」と書かれていました。その楽園では、家族ごとに十分な広さの土地と家を与えられます。子ども達はやがて成人し「地を満たし」た段階で出生も制限されますので、パートナーと二人きりの生活です。
見渡せる範囲内に煩わしい隣人はいません。彼らに干渉するものはありません。神の言葉だけに従えばよいのです。祝福された土地は豊富な食物を産出し、何不自由のない「幸せな」暮らしが永遠に続くのです。
これは米国人が描く典型的な理想郷のひとつです。核家族において主人の命令は絶対です。エバはアダムを助けるための「弱い器」として作られました。女性は「教会では黙っていなさい。〜従うものでありなさい」と云われる存在です(しかし日本のような奴隷ではありません)。子どもたちも父親の命令に従います。労働や勉学に従事しなければなりません。家長は、神の代理として君臨するのです。
獣と同じように人間にとっても上下関係は大切です。上下関係は健康にさえ影響を及ぼすからです。ライフスタイルがほぼ同じであっても、社会の上層に行くに従って寿命が長くなる事が分かっています。
日本のように上から下まで番号が振られているような社会では、上下関係が特に大切です。そこで人々は、大なり小なりの劣等感を抱いて生きていかざるを得ません。社会全体が抑圧され、個々人が能力を発揮することは制限されます。トップに立たない限り何もできない社会です。
しかし家族単位で、生計や仕事が分かれているのであれば話は別です。父親は絶対的な存在です。神から数えて2番目に位置しているのです。食事の際には父親がホストとして、儀式的に肉を切り分けて家族に与えます。
父親は絶対権力ですが、神には従います。慈悲深い存在にもなり得ます。「地の権威」として連邦政府や大統領にもある程度は従います。「カエサルのものはカエサルに」という訳です。無政府ではないのです。
隣人との関係は対等です。上下関係はありません。あるいは無いようなフリをします。もし自分の土地に理由なく進入してくるような人間が居たら射殺します。そのために銃があります。大統領が気に入らなければ、これを撃ちます。社会に不満があれば乱射する事もできます。
その行いによって罰を受けますが、銃を持つ権利は憲法で保証されています。何をするかは本人の自由です。人生に絶望したら自殺することもできるのです。
いわば銃によって精神の安定が保たれているのです。人間の理性が尊重され、その証として力が与えられます。結果としてふさわしくない行動をとったのであれば社会から取り除かれます。
陪審員制度というのも象徴的です。権力者ではなく普通の人々(People)が、良識に従って有罪か無罪かを決めるのです。連邦政府や大統領も権力を委託された仮の存在です。それが良いか悪いかを決めるのは、あくまで人民です。
銃を使った犯罪は多いかもしれません。しかしそれは必要経費のようなものです。全体として見れば、銃に象徴されるパワーが社会に安定をもたらし、平和を作り出しているという強い信仰があります。西部開拓時代において最も有名な銃であるコルトのシングル・アクション・アーミーは「ピースメーカー」という通称で知られています。
「神に似せて」作られた人間は、自分の運命を決められます。金持ちになることも出来ますし、Enemy of the Stateにもなれます。これがアメリカの原動力です。
ただし武器を持つだけなら野蛮人と何ら変わりません。理性を保つのは聖書の役割です。時代を超えて生き残った「言葉」を定期的に読ませることにより、初めて彼らは文明人となるのです。
トランプ氏の「家に聖書を」との発言にはそういった意味があるのです。「宗教はアヘンである」というのは本当です。しかしそれは良いアヘンです。人の苦痛をやわらげ精神を安定させるのです。
アメリカは覇権国家としては寿命が長い方です。第2次世界大戦から数えても、80年が経っています。この国は過去の覇権国家とは異なり、マスメディアにより支えられた帝国です。アメリカを嫌悪する人々以上に、米国に憧れを持つ人々がおり、多くの人々が移り住みます。
米国は資源国です。孤立しても十分にやっていけます。けれども世界の「平和」を保つために紛争地域に介入せざるを得ません。そういう大義名分があります。儲かるというのもありますが、それ以上に彼らは、現代における「ノブレス・オブリージュ」を具現化した存在でもあるのです(もちろん何であってもやり過ぎは良くありませんが…)。
武器を輸出するだけでは不充分です。自国の将校や兵隊を現地に派遣して解決にあたらせる必要があります。そうでなければ「強いアメリカ」では無くなってしまうのです。
そのためには国家に忠誠を誓い、厳しい訓練に耐えて外国で散ってくれる多くの兵士が必要です。国内で農業や畜産に携わる人も必要です。第一次産業に携わる人々が移民に置き変わってしまうというのは考えられないことです。自国の兵隊が外国人から構成される傭兵部隊となってしまう事もです。安全保障上あってはならないのです。だから「古き良きアメリカ」を取り戻すことが必要なのです。
彼らが居るからこそ、テック業界は夢を追い求めることができます。ウォール街も安心して金儲けに専念が出来るのです。
アメリカは保守的な価値観に支えられた国です。どんな巨木であっても根が腐ってしまえば倒れてしまいます。
そのようなアメリカに寄生して、命を保っているのが日本です。口先ではどんな綺麗事もいえます。しかし彼らにとっても、アメリカが覇権国家であり続けるのは、重大事であるはずです。
西部開拓時代を象徴する、シングル・アクション・アーミー、ウインチェスター、コーチガンを紹介しています。コーチガンはダブルバレルのショットガンです。至近距離で使うと強力な殺傷兵器となります。「猟銃」として日本でも入手が可能です。