日本人はカネを貢ぐのが大好きな人達です。どうしてなのでしょうか。この状態から抜け出す道はあるのでしょうか。
8月の大暴落そして2月からの暴落で多くの日本人投資家が相場から退場しています。資金が尽きてしまったのです。借金を抱えている人もいます。一方でいつの間にか資産が1億円を超えていたという人も大勢います。
大金持ちになろうと必死に投機を繰り返している人々から、余裕のある長期投資をしている人々への資金の移転が起きているのです。
このような一時的な暴落で退場せざるを得ない投機家には幾つかの問題があります。ひとつは日本人に多い「逆張り」です。なるほど相場の歴史で大儲けした人の多くは逆張りです。誰もが恐れをなして手を出さないような時に果敢に自己資金を大量に注ぎ込み、それが成功したのです。しかしその反対の討死による死屍累々の状況も忘れてはなりません。逆張りはあくまで賭けであり、それで成功するのは、幸運であったかあるいは何か特殊な才能があった人なのです。
投資では逆張りをしないのが鉄則です。たまたま儲けられても続けて行くうちに何処かで失敗するでしょう。
もうひとつは細かい「利確」と「損切」です。プロの機関投資家であれば短期間の成績で評価されますから、直ぐに損と利益を確定します(もちろんそうでない人もいます)。
しかし個人投資家がそれを真似なければならないという法はありません。上がるか下がるかという人間の判断は間違っている事の方が多いのです。そうするとやがて損切による損失額が積み上がって行く事になります。しかも細かい利確をしてしまうと売買手数料や税金も馬鹿になりません。長期的に保有することで得られる「複利効果」も捨ててしまう事になります。株式投資という大きなリスクを負っているのに、損が積み上がり得られる利益は僅かとなってしまうのです。
日本株は長期に渡って低迷が続きました。だから逆張りで待って少し上がったタイミングで売るという方法しかなかったのは分かります。しかしそれは正当なやり方ではないのです。
また日本人は生来の生真面目さから投機の勉強に励んでしまいます。努力と成果が比例すると考えているのです。そのために細かい「罫線」読みに一生懸命となってしまいます。チャート信奉者です。その結果、SNSで「私の考えた必勝法」を恥ずかし気もなく披露してしまうのです。ファンダメンタルでも「何々が何倍」といった細かい数字を気にしてしまいます。
何も知らないよりはマシですが、勉強や努力の量と投資の成績とはまったく別です。それよりも世事に疎い事のほうが遥かに問題です。
そもそも「投資は面白い」と言っている時点で心得違いをしています。むしろ退屈で詰まらないものなのです。余裕ある資金の中からほんの少しをギャンブルとして売り買いをしているというのなら分かります。それは全然構いません。あるいは普段は仕事として他人のカネの売り買いや管理をしているので、たまには自分のカネで自由に売買してみたいというケースもあります。それは面白く感じるだろうし人生のスパイスにもなるでしょう。
投機家向けの記事でも「なんだか良く分からないけど放っておいたら何時の間にか儲かりました」では面白くありません。「あんな事やこんな事をやって漸くここまで儲かりました」という内容でなければならないのです。本人に悪気は無くとも聞いている人はそれを鵜呑みにしてしまうのです。
最後に日本人のリスク管理の甘さです。日本人は平気で無限責任を負ってしまいます。そんな事が許される制度に問題があるのです。しかし大きな危険を冒しているという認識が無いのも問題です。為替における証拠金取引などが代表的な例です。なかには高利の借金をして相場に手を出している人もいます。現代の世の中には無限責任を回避する便利な仕組みがいろいろとあります。しかし多くの日本人は一か八かのアップサイドに目が眩んで、すぐ足元に広がっている深くて暗いダウンサイドが目に入らないのです。
さてトランプの関税により相場が大荒れとなっています。多くの人は「ブラフかと思ったら本当にやりやがった」と感じていることでしょう。関税によって「アメリカ人自身が苦しむ事になるだろう」とも思っています。
しかし多くのアメリカ人は困らないでしょう。それどころかアメリカ国内の産業が復活し庶民の暮らしは良くなっていく可能性があります。一方で超富裕層や富裕層は今までのようには行かないかもしれません。日々普通にモノづくりをしている人たちにとっては明るい未来が見えているはずです。外国からやって来てチャンスとカネを掠め取ろうとする人ではなくアメリカに生まれ真面目に働いて来た人々です。
むしろ今が米国に投資するチャンスかもしれません。というよりアメリカに投資をしない日本企業には未来がないでしょう。ブロック経済によって今まで以上に諸国間格差が広がります。このままでは日本は窮乏して行きます。
土下座をしてカネと日本人の命を差し出さなければならないのです。朝貢外交です。要するにアメリカに投資をし日本の若者を最前線へと派遣するのです。これはもう日本だけではどうにもできない流れです。
「(日本人は)前線に立つ(べきだ)」と言われてビビってはいけません。そもそもカネも無いのに「他国の兵士に自分の国を守って貰おう」なんて虫が良過ぎはしないでしょうか?
トランプの思いとは裏腹に、21世紀前半は戦争の時代となるかもしれません。米国人が直接最前線で戦う機会は減るでしょう。その代わりに外国から派遣された軍隊や傭兵が戦うのです。経済的に窮乏した国々同士の戦争も発生するでしょう。
またこれからはブルーカラーとホワイトカラーの給与の逆転が起こります。モノを作っている人がきちんと報われる世界が来るのです。株式投資で目覚ましい利益を上げるという時代もしばらくは終わりです。
少し説明しましょう。供給者の理由により商品の値段が上がるものが2つあります。労働者の賃金と資本家の利益です。給与を上げようとすれば商品の値段を上げなければなりません。また資本家の利益率を上げようとする場合も値段を上げなければなりません。
しかし上がり方には違いがあります。労働者の賃金を上げた場合には算術級数的に商品の値段に作用するだけです。一方で利益率を上げる場合には幾何級数的に商品の値段へ作用するのです。
豊かになり製品がありふれたものになると利潤が減っていくのが普通です。しかしそこで無理矢理に利益率を上げようとすると物価が高騰しインフレが進むことになります。
資本家は儲かりますが庶民/労働者は苦しむ事になります。現代の経営者は更なる利益を上げるように株主から強い圧力を受けています。そのために値上げだけでなく労働者の賃金を含むコストを出来るだけ削減し手っ取り早く利益を上げられそうな新規事業に手を出すようになるのです。これを糺(ただ)そうとしているのがトランプなのです。
それが上手く行くかどうかは分かりません。株価、そして原油先物や銅先物も下がりました。しかしキャッシュを握りしめていても意味がありません。日々ペーパーマネーは発行されてどんどん価値が下がっているのです。機関投資家はいずれどこかに投資しなければなりません。
ゴールドやビットコイン、米国債は今のところ何とか耐えています。しかしこれだけでは巨額のペーパーマネーを吸収し切れないのです。
結局のところ長期の金融緩和によってダブついた不換紙幣と、膨らんだ政府の巨大債務をどうするかが問題なのです。
政策金利を高く保ったまま経済成長に身を委ね、適正な量にまで不換紙幣を減らしていくしかないのです。しかし一方で長短期含めての金利が高くなれば政府の借金返済は苦しくなります。だから繊細な金利操作が必要になります。正解は誰にも分かりません。「経済成長」がなくなれば更に解決は困難になります。
少なくとも日本人にとっては相場で簡単に儲けられる時代が終わりを告げた可能性があります。一発逆転の道が閉ざされてしまったのです。かといって真面目に働いて報われる事も無いのが絶望的です。
日本人は環境に適応できなかった集団です。人口が減っているのが何よりの証拠ではありませんか。その中でも特に飼いならされて家畜となってしまった人々が当てはまります。彼らは時の流れの中で淘汰されて行くのです。
今さら自分で考えて行動しようとしても失敗するばかりです。国の言うことに従うしか道はないのです。死ぬまで働けと言われればそうするのです。戦地に赴けと言われればそうするのです。コメの飯にありつけますし上手く行けば寿命を全うできるかもしれません。親や国にも奉公ができます。有り難いことではありませんか。
余計なことを考えずに「その日暮らし」を徹底するのです。江戸時代の庶民もそうでした。そうして時々「下がらないコメの値段と血糖値」のような川柳を吟じて笑えばいいのです。