「貯蓄から投資へ」というスローガンが言われるようになってから久しくなります。我々は否応なくその方向へと進まざるを得ません。世の中が今どう動いているのかをよくよく見極める必要があるのです。
日本は昔から低賃金労働者を使いながら安物を外国で売って稼いできた国です。ところが高度成長期を経て日本人の所得が上がってしまった為に、以前のように儲けることができなくなってしまったのです。ですから庶民から富を奪い、再び低賃金労働者にすることで日本の経済力を復活させるというのが国の目論見です。
昔の日本では法人税が高く、多少なりともその富を国民に再分配するという流れになっていました。社会福祉国家的な面も持っていたのです。ところがもはやそんな余裕もこの国には無くなってきました。
現在は社会保障を削り増税することにより、庶民からカネを吸い上げ、法人税減税や消費税還付金といった形で大企業を優遇している状況です。
社会のルールは変わりました。現在はそれに気づかない金融リテラシーに欠けた人々から、知識ある人々への富の移転が起こっているのです。格差はますます広がっていきます。
円安が進んでいます。日米金利差でこれを説明する人もいますが、今の円安はもっと根本的なところに原因があります。そもそも日本人自体が日本円を信じていないのです。庶民ではなく富裕層がそうなのです。円はもはや貧乏人の通貨です。韓国の人達も投機として日本円を売買したり割安なブランド品を手に入れたりしています。
庶民は円安から来る物価高で苦しんでいます。けれども大企業や富裕層、政治家や役人はさらなる円安を望んでいるのです。彼らにとっては円安は良いことばかりです。輸出によってさらに儲けることができますし、外貨建ての資産も相対的に価値が増えていきます。輸出企業の業績も良くなり株価が上がります。新聞には「円安による利益上乗せ」という文字が頻繁に踊っています。物価高で苦しむ人々以上に、株価が下がっては困る人が大勢いるのです。彼らは声が大きく力もある人達です。
円の価値が毀損されれば、借金をしている国は返済が楽になります。国も大量の外貨や外債を保持していますので、円安によって含み益が増えます。ですから円安が進んでも「緊張感を持って見守る」ことくらいしかできません。
しかしながらGDPに占める個人消費の割合は半分以上あるので、現在のような不況ではGDPが縮小していってしまいます。そこで無理矢理に財政出動をすることでGDPを嵩上げし、減少した分をカバーしているのです。国が業者に割高な発注することでカネが市場に流れていきます。オリ◯ピックや大阪の万◯などです。国を挙げての次世代半導体プロジェクトも怪しいものです。実現の目処も立っていないのに工場を作り始めています。これらは日本人に課せられたシシュフォスの岩のようなものでしょうか。結局それらの行為は円の価値下落に繋がります。でも知ったことではありません。中抜きによって儲けた業者はカネを外貨に変えることで資産価値を保全できるからです。彼らは愛国者からは程遠い人達です。
国は個人が活動するあらゆる場面で税を課そうとしています。たとえお金を使わなくてもインフレによって庶民の資産は目減りしていきます。
そんな中で唯一合法的に課税を免れることができるのが、NISAやiDeCoという制度なのです。新NISAは一人当たり1,800万円の投資枠です。4人家族ならその4倍です。とはいっても全く金融リテラシーの無い庶民に「投資をしろ」というのは酷な話です。
日本には未だカネがあります。「これからの日本は投資や経営で生きていく」と彼らは豪語しています。庶民にも「社会保障は無くなるから覚悟してね。カネが無いのなら投資をすればいいんじゃない?」と言っているのです。
投機を単に上か下かを当てるゲームだと仮定してみます。右肩上がりに値段が上がっていくのでは無く定められた値を中心にしてランダムに上下に動く商品のようなものです。その場合には長期に渡り売り買いを続けるほど、確実に手数料という胴元の取り分に等しい損失が拡大していことになります。儲かったら税金もかかります。その税金が掛からないだけでも非常に大きなメリットではあるのです。
そうは言っても日本人は投資には向かない人々です。投資や経営をする者ではなく奴隷となるべく育てられた人々だからです。
株式投資でさえ参加者の7割から8割が損をして1年以内に去っていくと言われるほどです。毎月定額でインデックスに連動したファンドを積み立てて行くというオーソドックスな方法でさえ、完遂出来ている人はあまりいません。高値が続いた後に恐る恐る申し込み、下落した場面では恐怖にかられて解約してしまいます。
もし仮に積立を20年以上続けられても結果は分かりません。1990年前後のバブル期にTOPIXや日経平均に連動するインデックス・ファンドはありませんでしたが、もし仮にそういったものを買っていたとしても、30年以上経った今でも未だその頃の株価に届いていないのです。30年間も不況が続くなんて本当に「奇跡の国」です。今は回復不能なスタグフレーションになるかどうかの瀬戸際です。財務省や日銀のお手並みを拝見といった所です。
日本人は臆病でリスクを取るのを嫌がります。サンクコストに敏感で失敗が明らかになっても同じやり方を続けます。確固たる信念や明確な軸がなく、他人の意見にフラフラと左右されます。眼の前の利益に飛びつき、長期的な目標を達成することができません。彼らは刻々と変わる相場のルールを見抜いて機敏に対応していくこともできません。
さらに資金に余裕が無い人ほど、最初の種銭(たねせん)を作るために大きなリスクを取ってしまいます。FXや個別銘柄の短期売買で一発当てたいと思っているのです。
日本経済がこれからも着実に右肩上がりに成長して行くのであれば、普通に給与や利子、配当をもらって豊かになれるのです。しかしそれが見込めないということなのです。だから国民にも「キャピタルゲインを狙え」と言うのです。インフレが進む中で株価だけがスルスルと上がっていく未来です。
国が借金している相手は日本人なのだから日本は心配ないという人もいます。確かに日本国債を買っている9割が日本の投資家です。でもそんな彼らだって日本円の信頼が揺らいだらどうなるか分かりません。役人は国と一緒に心中するつもりのようですが、民間はそうはいかないのです。
通貨の価値が目減りし国が滅びる時というのは、その国に対する信用がなくなった時です。国の信用は経済力と軍事力によって決まります。現在の日本は宗主国に寄生することで何とか凌いでいる状態です。ハリボテの経済と宗主国の威光でどうにか円の価値を保っているということです。日本は東アジアの地政学的リスクを過大に見積もり、軍事的衝突を演出しなければなりません。その為には彼らは何だってやります。軍事・宇宙関連の予算はどんどん積み上がっています。財政出動を繰り返しGDPも保たねばなりません。
そうは言っても宗主国が日本を必要とせず足手まといだと判断する時が来ます。その時に日本はどうするのでしょうか。日本語メディアを鵜呑みにしているような人々に未来はありません。目まぐるしくルールが変わっていく現代社会において、我々は常に目覚めていて準備を怠らないようにしなければならないのです。
用意のできていた女たちは、花婿と一緒に婚宴のへやにはいり、そして戸がしめられた。そのあとで、ほかのおとめたちもきて、『ご主人様、ご主人様、どうぞ、あけてください』と言った。しかし彼は答えて、『はっきり言うが、わたしはあなたがたを知らない』と言った。だから、目をさましていなさい。その日その時が、あなたがたにはわからないからである。
(マタイ25章10〜13)
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