kurukuru89’s blog

主に原始キリスト教、哲学、心理、日本人について、気の赴くままに語ります。知識ではなく新しい視点、考え方を提供したいと思っています。内容は逆説的、独断的な、投影や空想も交えた極論ですが、日本人覚醒への願いを込めたエールであり、日本の発展に寄与する事を目的とします。(ここで言う日本及び日本人とはあたかもそれらを代表するが如く装うが、理性が未発達な為、感情的に動き、浅薄な信条に左右され社会に仇なしてしまう集団や人々を主に指しています)これらを通して人間に共通する問題をも探り散文的に表現していきます。

映画「娘の季節」

「娘の季節」は1968年の日活映画です。今年の7月に亡くなった和泉雅子さんが主演です。女優業の他に1980年代からは冒険家としても活躍しました。

 

この映画はちょうどワンマンバスが台頭した頃を舞台としています。それまでのバスは運転手と車掌の二人体制で運行されるのが普通でした。車掌は運賃受取と乗車券管理、安全管理という重責を担っています。しかしながら低賃金で労働条件は良くなかったのです。さらに危険でもありました。

車掌は「バスガール」と呼ばれていました。給料は安くとも格好の良い制服に身を包み、都心近くの寮で生活が出来ました。華やかで憧れの職種のひとつだったのです。

 

映画では芦川いづみさんが先輩車掌役として登場します。「ステップ乗車」をしていた際にトラックとの事故に遭遇し片手を失ってしまったのです。そのため車掌は引退して事務作業をしています。

「ステップ乗車」とは車掌が乗降口のステップに足を掛けた状態でバスが運行する状態のことです。車掌が半身をドアの外に乗り出している事もありました。当然のことながら転落や接触の危険がありました。表向きは禁止されていました。けれども運行を円滑にするために黙認されていたのです。

 

車掌は若い女性が多く、乗客から色目を使われる事もしばしばでした。見た目には気を使わなければならず、化粧やパーマ代にもお金が掛かったのです。少ない給料で遣り繰りをしなければいけませんでした。禁止されている副業をしている人も多く会社に知られると忽ち解雇されたのです。

映画では主人公「みどり」と運転手とのロマンスが描かれます。今では想像しにくい事ですが、バスの運転手は高給で社会的地位も悪くなかったのです。運転手との結婚は彼女らにとり夢のひとつだったのです。交流を深める社員旅行も一般的でした。映画でも「よみうりランド」で社員が楽しく語らうシーンが登場します。

 

みどりの同僚は運よくパチンコ屋の社長と結婚することが出来ました。日本語はあまり喋れませんでしたがお金を持っていたのです。其の為にそれまでとは比べ物にならない豪奢な生活を送れるようになりました。

他の仲間は乗客の大学生と交わり妊娠してしまいます。結婚を夢見ますが男性の両親からは罵られ「堕ろせ」と言われます。バスガールは見た目が派手でふしだらな女性という印象もあったのです。結局は寮仲間の協力を得て一人で出産する事になります。

結婚は、将来が見えない不安定な環境から抜け出す唯一の手段だったのです。それを考えればみどりが、交際相手の運転手に後ろから抱きつくシーンの切実さが認識できます。

 

映画では横浜の地名が聞かれますが、八王子、多摩地区、杉並区などがロケ地となったようです。今見ると鄙びた風景が印象的です。当時は自家用車はあまり普及していませんでした。映画でも、業務用の車がはける夕方になると急にひっそりとした様子となっています。

 

今とは環境も時間の流れも大分異なります。けれどもワンマンバスの普及により、バスガールはまもなく職を失う事になります。彼女達にとっては激動の時代だったのです。

娘の季節

娘の季節