映画「ザ・キング」の主人公は貧しい不良少年でしたが、父親が若い検察官にひざまずいて許しを乞う姿をみて、検事になる決心をします。念願叶ったものの、薄給で激務に追われる毎日です。ところが大学の先輩に誘われ「戦略部」部長の取り巻きの一員となると、生活は一変します。将来の検事長候補と目される部長はそれまでの検事のイメージとは全く違うものでした。連れていかれたペントハウスで、女を侍らせ不機嫌そうな顔をしながらグラスを傾ける二枚目が部長でした。
戦略部では、起訴を待つ様々な案件を寝かしておいて、時期を見計らって政局や世論を動かしたり、スピン報道として国民の目をそらすのに使うのです。手足となる暴力団、有力メディアのお抱え記者を持ち、電話一本で何でも希望を叶えることが出来ます。酒池肉林の毎日を過ごし、あらゆる快楽が手に入ります。役所に行けば誰もが頭を下げます。さらに検事長ともなれば自国の大統領でさえ屠る事ができるのです。彼はあらゆる力を有した「キング」となったのです。
役人は法律に従っていても「常識」と「良心」を捨て去ってしまえば、簡単に腐敗します。法を道具として使い始めれば、法治国家が独裁国家へと転じます。しかもその独裁者の姿は外からは分からないのです。ただしそんな国でも自浄能力があれば変わることが出来ます。その原動力は正義感に支えられた人々の「怒り」と「勇気」です。
翻って、どこかの国の住民はどうでしょう。感情の麻痺した人間には何も変えられません。知性や民度以前の問題です。
居丈高な人々ですが、圧倒的なパワーを目のあたりにすると、恥も外聞もなく屈します。そして「追いつき追い越せ」とばかりに一丸となって猿真似を始めます。嫉妬や見栄だけは強いのです。ところがある程度まで来ると今度は「学ぶことは何も無い」とばかりに傲慢な態度へと変じ国全体の衰退が始まります。諸外国とも軋轢を生じ、ついには破滅的な行動へと向かうのです。その繰り返しです。心に基準を持たない人々は「お手本」が無くなるとたちまち堕落します。
我々は「いつか来た道」を辿り始めています。再興にはまず誰かに叩きのめされなければいけません。惨めな話だとは思わないでしょうか。
プライドを捨てろ!権力に寄り添え!チョ・インソン×チョン・ウソン【ザ・キング】特報