ミサ・ソレムニスはベートーヴェンが晩年に書き上げた大作です。ミサ曲と言いながらも大変規模が大きく、演奏会用として作られた曲です。
この曲は、ベートーヴェンの親友であり、パトロンでもあり、ピアノ演奏と作曲の弟子でもあったルドルフ大公に贈られました。神聖ローマ皇帝レオポルド2世の末子です。ルドルフ大公がオルミュッツの大司教に就任することを知ったベートーヴェンは、ミサ曲を作り就任式で演奏することを思い立ったのです。
結局はベートーヴェン自身の病気などもあり就任式には間に合いませんでした。本曲は、最後のまとまったピアノ曲である「ディアベリ変奏曲」と平行して書き進められました。
ルドルフ大公はパトロンの中でも、最後までベートーヴェンを支援し続けた人物です。友との惜別を歌ったピアノ・ソナタ「告別」も彼に捧げられたものですし、通称「皇帝」で知られるピアノ協奏曲第5番も彼に献呈されました。「三重協奏曲」のピアノのパートもルドルフ大公が演奏する事を前提として作られたのではないかといわれています。もともと体は丈夫ではなく、43歳で亡くなっています。
この曲の初演はペテルブルクで、ウイーンでは交響曲第9番と一緒に披露されました。本曲だけでも1時間半くらいかかるので、一部分だけが演奏されたそうです。
ミサ・ソレムニスは、荘厳で崇高な雰囲気のある複雑で大変格調高い曲です。ベートーヴェン好きなら絶対に外せない曲です。
楽譜出版社とのやり取りが書簡で残っているのですが、ベートーヴェンによる値付けは、交響曲第9番が600フローリンであるのに対し、ミサ・ソレムニスは1,000フローリンとなっています。1,000フローリンは、現在の価格でいうとざっと1,200万円といったところでしょうか。ベートーヴェンの自信のほどが伺えます。
またベートーヴェンの最も有名な肖像画は、この頃に書かれたものです。髪を振り乱しペンを握り空を見つめている絵です。手にしている楽譜に「Missa solemnis」とあります。
ミサ曲を音楽的にどうこうと言うのも野暮な話です。ならばいっその事、表面的な美しさを追求するのはどうでしょうか。カラヤンの演奏は、この曲が持っている音響的な効果を存分に発揮したものです。ミサ曲に似つかわしくない程に派手な金管楽器の響きも効果的です。全体的に、カラヤンらしく曖昧なところのない分かりやすい演奏となっています。
「Ⅱグローリア」から「父なる神の栄光のうちに」です。
「ミサ・ソレムニス」の全曲です。カラヤンによる1966年の録音です。冒頭の「キリエ(主よ)」が圧巻です。ソプラノを務めているアンナ・トモワ=シントウの声が素晴らしいです。1:18からです。