米国ウィスコンシン州出身のギター奏者であるトニ・リンドグレーンさんによるボブ・ディランの「バケッツ・オブ・レイン」のカバーです。
この曲の歌詞は、一見ラブソングのように見えます。実はもっと深いものについて語っています。永遠に分かりあえない人間同士の関係と虚しい人生を歌った曲です。
「友が来て友は去っていく」「人々は煙のように消えていった」という文があります。何一つ永遠に続くものはありません。好きな女性に求愛する一方で自分がどんどん惨めになっていきます。相手を称えながらもとめどなく「涙が溢れ出す」のです。
「猿じゃないから自分の好きなものは分かっている」と言いながらも、「君のここが好き」「あそこが好き」としか言えません。結局のところ人間は「自分が何を求めているのか」さえも良く分かっていないのです。もちろん「何故この人を求めているのか」という事も分かりません。
「人生は悲しい」「人生は破綻だ」とボブ・ディランは続けて語ります。多くの人々はアルコールやドラッグの力を借りて、自分と外界とを隔てている薄い意識の膜を出来るだけ希薄化し、それによって他人や世界を理解したような気になろうとしています。そうして孤独である事を忘れるのです。
単なる生殖行為では収まり切らない恋愛もそういったもののひとつです。それでも「一緒に来てほしい」と惨めにも求め続けるしかないのです。それが意味のない長い人生のほんの一瞬の慰めであっても。