今の世界では、個人の能力だけではなく、信用が大事です。情報通信技術の発達によって、広範囲にわたる信用の蓄積が重要になっているのです。
個人の信用と能力について、貸借対照表と損益計算書を模した、簡単なイメージを作ってみました。下図がそれです。
右側の箱が「貸方」、左側の箱が「借方」と呼ばれます。CreditとDebitです。右側が原因で左側が結果です。左上が現在の自分の状態を示します。つまり、信用があるからカネを得られて、それが資本(もとで)となり事業を始められます。これらが形を変えて、自分の資産(アセット)、すなわち、自分が現在備えている武器となるのです。
これによって、「今期の信用度や能力はこれこれであり、さらに自己研鑽をこれだけやったので、来期はこの程度の結果を生むであろう」という見通しがつくわけです。
これだけでは良く分からないと思いますので、上の図を加工したものを、下にあげます。
右端に「信用」と「能力」という箱があります。信用があれば他人の協力を得られます。お金を貸してくれるかもしれません。あるいは「何かを教えてもらう」「無償で手伝ってもらう」という事もあるかもしれません。さらに自分の能力を使って仕事をし、その対価としてお金をもらいます。それが真ん中の箱です。
それらがインプットとなって、左上の箱にあるような状態となります。例えば、手元にある資金を使って、新しいPCを買ったり、事務所を手に入れたりするかもしれません。それは仕事をする能力の向上につながります。スキルも高まっている事でしょう。仕事をした過程において、信用度も増しているかもしれません。言ってみれば、現在の自分の戦闘力が、左上を見るだけで把握できるのです。これが資産(アセット)の意味です。
また下の箱に、「費やしたもの」(コスト)と書きましたが、自己研鑽や交友によって、自身の能力や信用を増すことができます。これで来期の予想が立ちます。こうして高められた能力や信用度が、右端の箱へとつながり、さらなる好循環を生み出します。
こういったサイクルによって、個人のみならず、社会全体が成長していくのです。
資本主義は、成長への信頼から成り立っています。未来への希望があるから、人は投資をするのです。まず相手に与えてから、貰うのです。カネはそれを媒介するものでしかありません。与えるのが先です。
大きなヴィジョンを描き、それを実現する能力の高い人が信頼されて、出資を受けるのです。
単に利ザヤを稼ごうとする行為は、投機と呼ばれます。誰かがトクをする代わりに、誰かが損をするゼロサムゲームです。
未来への希望や、相手への信頼が失われたときに、資本主義は成り立たなくなります。
日本はその嚆矢となっています。もともと日本は、縦割りで、小さな共同体が多いという特徴があります。お互いの関係も希薄です。転校や転職などによって、信用度はリセットされてしまうのです。いちから信用を築き上げねばなりません。
生まれてから引退するまでの信用の蓄積が必要となっているのに、これまで以上に、お互いを疑っているのが日本人なのです。
信用が無いから、上の図で示したようなサイクルが機能しません。個人や法人は、利益を貯めこもうとしています。出費は控えます。投資ではなく、コストカットに走ります。多大な出費を必要とするので、結婚や出産でさえリスクの高い賭けとなっています。
これは成長ではなく、衰退へと向かう社会です。らせん状に縮小する社会です。人々の間にも、信用と有能さの代わりに、不信と無能が、多く見られるようになりました。
これからは40代でクビになる時代です。今でさえ年金は65歳にならないと貰えないのにです。今のようなサラリーマンはいなくなるでしょう。多くの人々が個人事業主のようになります。年金にしても、ある日突然に「廃止します。あとは自己責任」などと言われ、幾ばくかのカネを渡されて終わりでしょう。生涯現役、人生100年の時代なのです。格差が広がっているだけでなく、社会全体が衰亡しています。
生活保護を貰うような人々は「卑怯だ」と言われる社会です。感染症にかかっても自宅療養を強制されるような社会です。弱者に厳しい社会です。仕事を失えば、野垂れ死にか自殺しかありません。
22歳から45歳までの間に出来るだけ稼がなければなりません。多くの日本人は15歳から働き始めるでしょう。全体のパイは縮小しています。未来は悪くなるばかりです。厳しい現実を直視しながらも、楽観的に行動しなければなりません。日本では今、究極の椅子取りゲームが始まっているのです。
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