経済が発展していくには戦争が必要です。戦争は恐慌と同じように必須の出来事です。我々は経済発展と世界平和を同時に願うことはできません。どちらかを選ぶしかないのです。
2023年末の米国の株価は危ういものがありました。FRBによる利上げの可能性があり、株価も債券も不安定な状況だったのです。暴落に賭けて空売りのポジションをとっている人も多くいました。そのような時に中東でタイミング良く新たな紛争が起こってくれたのです。現在、米国でも日本でも株価は順調に高値を更新しています。
レイ・ダリオが創設した連戦連勝の巨大ヘッジファンドであるブリッジウォーターが、2023年の11月から12月にかけて大きな損失を出しています。この時期は彼らにとって意外な展開だったことが分かります。
現在起きている戦争は大変重要なものです。ウクライナでの戦闘も中東でのそれも、アメリカの威信をかけた戦いだからです。米国はいまだに世界最大の経済国であり軍事国家ですが、同時に衰退途上にある国家でもあります。
もしも今回の戦争が、アメリカ側が一歩引くような形で終わってしまったとしたら、それは米国の凋落を如実に示すものとなります。それでもドルの基軸通貨としての役割が終わるのはもう少し後になりますが、少なくとも米国株と米国債は影響を受けることでしょう。
それよりも悪い事に、もし対外的な紛争解決に失敗すると、今後米国で内戦が発生する可能性が高くなります。米国内では深刻な経済格差や人種間の分断があり、年々その不満がくすぶっているのです。内戦の勃発は、国家として最終段階にあることを示します。
米国株や米国債を保有している人達はアメリカを応援せざるを得ないはずです。そうでないと「態度が矛盾している」という事になります。もちろん、米国が衰退すれば日本もただでは済みません。
「戦争で儲かる」もっと言えば「経済が活性化する」というのは本当です。元来、経済活動によって得られる利益は次第に減っていきます。原因は、競合他社の存在、モノ余り、安売り、デフレ、消費意欲の減退などさまざまです。
そのために定期的に恐慌や戦争が起こります。恐慌というのは供給者側の淘汰です。信用が崩壊し、融資の撤回が起こります。株価は暴落します。失業者は増大し、企業や銀行が倒産します。
これに対して、戦争というのは強制的な消費です。兵器や弾薬、石油などの直接的なものの消費だけではありません。重要なインフラや人材が瞬く間に消えて無くなります。平時では時間をかけてインフラが減価償却されていきますが、それが瞬時に起こるのです。インフラを整備したり人材を教育することで新たな需要も生み出します。
戦争による心理的な影響も見逃せません。戦争によって人々は不安と高揚感を同時に抱きます。それが消費や出生の増加につながるのです。
このように恐慌や戦争は、需要と供給のバランスを上手く取り直してくれる働きがあるのです。これを避けるには、イノベーションやテクノロジーの刷新を繰り返していくしかありません。例えばiPhone が現れる前は、多くの人はそれを欲しいと思うどころか、想像することさえ出来ませんでした。しかし現在ではスマホは必需品となっています。新しいテクノロジーや発明により、新たな需要が生まれるのです。技術者の存在は一般に考えられている以上に重要です。
国家の興亡は、教育水準、生産性、所得、債務のバランスによって決まります。国家が興隆するには、まずもって教育が必要です。教育があるからこそ、生産性が上がり、その結果として所得が増えるのです。そしてさらなる成長を遂げるために債務すなわち借金によってレバレッジをかけるのです。ただし債務より所得は多くなければなりません。あるいは所得が上がる見込みがないといけません。つまり「借金を返せるアテがある」という事です。債務超過で、かつ生産性も低いのでは未来がありません。生産性が低いということは「これから所得は減っていく」という事を示すからです。
このバランスが崩れ、もはや立て直しが出来ないという段階で、その国の破綻が明確になります。そうして次の覇権国家が興隆するのです。米国は現在かなりの債務を抱えていますが、まだ所得水準は高く生産性も悪くはありません。
ちなみに日本は、巨額の債務を抱えていながら、生産性は著しく低いままです。そのためにこれからますます所得は減って行きます。教育には全く力を入れていません。法人や富裕層は日本を見捨てて、資産を海外に移しています。対外資産も巨額ですが、日本円に替えられて国内に戻ってくる事はないでしょう。
日本の債務のほとんどは、貸し手である国民を犠牲にしている点が特徴的です。つまり国民の貯金や保険、年金積立を通じて、知らぬ間に半強制的に日本国債を買わされているのです。
国民への弾圧や洗脳が行われていますが、民が民ならばいつ内戦や革命が起こってもおかしくはない状況です。そうして最後に通貨の信用が崩壊するのです。以前の日本は、高い貯蓄率と低い債務によって信用を保っていたのに、自らそれをぶち壊してしまったのです。これから戦争が起こって特需があったとしてもそれは一時的なものです。
しかも日本は自然災害が多い国です。天災が起こるたびに国の衰退に拍車がかかっています。それに加えて人口は減る一方です。すなわち全体の生産力が衰えるのでGDPも縮小していきます。
この国で根本的な制度の改革が起きない限り、未来はありません。最終的に日本円への信用はなくなり、急激な円安と金利の上昇が発生し、国の終わりを迎えます。
アメリカのような覇権国家といえども、それが未来永劫続くという事はありません。しかしやり方によっては衰退の速度を遅くすることが出来るのです。米国はいまそのような重大な状況に置かれています。世界最大の軍事国家であり続ければ、ドルも基軸通貨であり続けます。
もしあなたが資本主義の世界を受け入れているのなら、恐慌や戦争も受け入れなければなりません。イノベーションにもテクノロジーにも寄与していない人ならば尚更です。たとえ自分は平和であると感じても、そのツケは必ず誰かが払っているのです。