ビットコインには本当に価値があるのでしょうか。ビットコインを手に入れるのは危険な投機でしょうか。もし価値があるとしたらその理由はなんなのでしょうか。
モノの価値には2種類があります。「交換価値」と「使用価値」です。
「交換価値」とは、それが別のモノと交換できる価値を持つかどうかです。貨幣は交換価値を持つ代表的なものです。ゴールドや高級腕時計、保存性のある食物もいざという時には他のモノと交換ができます。交換に使えるという事は、人間がそのモノ自体に何らかの価値を認めているという確かな証拠です。
これに対して「使用価値」とは実際に人間が使ってみて役に立つかどうかです。空気は人間にとって大切なものであり無くてはならないものです。しかしながら有り触れているのでカネを出して迄して手に入れようとはしません。
一方でゴールドや宝飾品は直接に何かの役に立つ訳ではありません。けれども人はこれを欲しがります。単に綺麗なだけだったら代わりになるものが幾らでもあります。この違いはなんでしょうか。
それは希少性です。空気は地球上のどこでも見つける事ができます。いっぽうでゴールドや宝石は量が限られています。手の込んだ工芸品も価値が高くなります。一般的に人間の労力が多く注ぎ込まれたモノは高価になります。数が少ないからです。複雑で性能が高く優れたデザインの自動車は、ありふれた一般自動車と比べて価値があります。
資本主義社会で測られる人間の価値も同じです。医者とインフラを整備・修繕する配管工や自動車整備工とを比べてみましょう。いずれも人間にとって無くてはならないものです。彼らが居なかったら場合によっては生命に関わります。しかしながら医者を養成するには時間とカネがかります。一方で配管工や自動車整備工は誰でもなれると思われています。医者のほうが希少性が高いので報酬が高くなるわけです。
労力がいたずらに注ぎ込まれれば良いというものではありません。日本人が作るような安くても無駄な機能が満載された家電品は誰も欲しがりません。しかも醜くて見栄えが悪いのです。彼らは自分たちでさえ「欲しい」と思わないような商品を作っています。そんなものでも安くすれば誰かが買ってくれると思っているのです。商品は「人が欲しいと思う」「けれども数が少ない」という2つの条件を満たしていることが必要です。要するにこれが「需要曲線」「供給曲線」の意味なのです。
このように「価格」を決定するのは「使用価値」ではなく「交換価値」なのです。
さてビットコインは「交換価値」が高いのでしょうか? はい、ビットコインは高い「交換価値」を持っています。ビットコインはマイニングによって産出されます。時間と手間がかかります。人間は手間をかけたものに価値を認める傾向があります。たとえば苦労して得たゲームのポイントのようなものも高価格で取引されるではありませんか。
またビットコインは際限なく生み出されるのではなく半減期を迎えるごとに産出が困難になります。これらの仕組みによって人工的に希少性を作り上げているのです。
通貨としての利便性にも高いものがあります。ネットさえ繋がれば何処でも使えます。世界のどんな相手とも取引ができます。今までは海外と商取引をするのであれば、米ドル等の国際的に使える通貨にいったん変える手間が必要でした。この場合は為替レートを気にしなければなりません。また為替取引を挟むのでそこで幾ばくかの手数料も取られます。しかしビットコインならば国内でも外国でもそのまま使えるのです。
ビットコインには価値の裏付けがないという人がいます。しかしゴールドだって価値の裏付けはないのです。人間が「欲しい」と思い込んでいるから価値があるだけです。犬や猫にとってみればゴールドは無価値です。日本円に至っては世界の中でごく僅かな人々が価値を認めているに過ぎません。法定通貨だから仕方なく使っているだけです。
ビットコインは上述したように人工的に希少性を作り出しています。だから人はそこに価値を感じる事ができるのです。ゴールドとは異なり物理的に盗まれることがありません。違法に収奪するには高度なハッキング技術が必要です。
ゴールドと同じように、ビットコインは特定の国に縛られない価値を持ちます。米ドルは強いアメリカの法定通貨だから皆が手元に持ち商取引に使うのです。もし仮に米国が崩壊したらドルは無価値になります。日本円の場合にはこの先どうなるか分からない日本経済だけが担保です。
その国の中央銀行が発行している通貨は、長い時間軸で見れば国の衰退とともに価値が低減していきます。量的緩和を行えばインフレが急激に進み通貨の価値も激しく毀損されます。
しかしながらビットコインは、ゴールドと同じように希少性が損なわれて価値が減じることはありません。新しい金鉱脈が発見されることもないので、その点ではゴールドよりも優れています。
ビットコインは最新のITインフラを基盤としているので「文明が崩壊した時にどうなってしまうのか」と心配に思う人もいるかもしれません。
けれども想像してみてください。仮にこれから文明が大きく崩壊したとしても全ての電力網やインターネット網が使えなくなる事は考えにくいのです。インターネットの前身であるアーパネットは、全面戦争にも耐えられる通信網として作られた事を思い出すべきです。「マッドマックス」のような世界はSF映画だけの話です。
仮に全面核戦争が起きて幾つかの国が崩壊した状態を仮定してみましょう。そんな状態でも必ず商人が現れます。彼らは文明が崩壊しても積極的に商取引を試みるはずです。残っている通信網を使って届く限りの範囲で商取引を行おうとするでしょう。そんな時にはビットコインが大いに役立ちます。何しろ日本円どころか米ドルの信用も崩壊しているかもしれないのです。ゴールドや高級腕時計では持ち運びに不便です。少額の決済にも向きません。相場だってマチマチでしょう。途中で盗まれるかもしれません。しかしビットコインは違います。
破壊された通信網だって直ぐに回復されるはずです。残された技術者を集めて通信塔を立てることでしょう。民間に残された技術で通信衛星だって打ち上げることが出来るはずです。サーバーやタブレット、スマホを作る業者だってどこかに居るはずです。データセンターも回復されます。なんといってもこれらはカネになるのです。人間は利便性があって儲けられるものなら一度手に入れた文明の利器を手放そうとはしないのです。
ゴールドや不動産は盗まれたり奪われたりします。戦争が起こり政府が崩壊した無秩序状態を想像してみてください。ゴールドを少しでも持っている事が知られたら安全ではないでしょう。不動産も同じです。所有権を担保してくれる政府や法律家はいません。契約書は意味をなさなくなります。土地を奪われないためには武力が必要です。そのために全ての国は軍事力を保有しているのです。
こうしてみると財産を保全する手段としてビットコインは最適であることが分かります(ただし現在は税金の問題があります)。すべての仮想通貨に未来があるわけではありません。それどころか詐欺の温床になっているものさえあります。しかしながらビットコインとそれを裏付けにした仮想通貨や金融商品ならばこれからも使い続ける事ができるでしょう。
個人の取引だけではありません。これからは法人間の取引もビットコインが主流になっていくでしょう。為替変動や特定の国の恣意に左右されないからです。国際取引だけではなく国内取引もビットコインで決済されるようになるのです。
米国も戦略的準備金としてビットコインの備蓄を進めようとしています。もし仮に米ドルに誰も見向きもしなくなる状態になっても、ビットコインがあれば国際取引を維持することができます。国家安全保証上から見てもビットコインには大きな価値があるのです。
ビットコインは危ない投機対象ではありません。現在の高値もバブルではありません。本質をよく認識することが重要です。