kurukuru89’s blog

主に原始キリスト教、哲学、心理、日本人について、気の赴くままに語ります。知識ではなく新しい視点、考え方を提供したいと思っています。内容は逆説的、独断的な、投影や空想も交えた極論ですが、日本人覚醒への願いを込めたエールであり、日本の発展に寄与する事を目的とします。(ここで言う日本及び日本人とはあたかもそれらを代表するが如く装うが、理性が未発達な為、感情的に動き、浅薄な信条に左右され社会に仇なしてしまう集団や人々を主に指しています)これらを通して人間に共通する問題をも探り散文的に表現していきます。

中抜きIT企業での一日 -日本における既得権益の旨味-

中抜き企業での仕事はラクです。そんな会社での一日を描写してみます。あくまでフィクションです。

 

朝はラッシュを避けて、ちょっと遅めの出社です。雨が降っているので、途中からタクシーを利用します。もちろん経費で落とします。

今日はオールデンの靴なので濡らしたくありません。スニーカーのように履き心地の良い革靴です。時計は目立たないように、ロレックスのエクスプローラー1をつけていきます。客よりも目立つ時計はさすがに不謹慎ですから。

 

会社に着くとノートPCを開けて、メールを確認します。一通り返事を出したら、一休みです。喫煙所でタバコ休憩です。異動や組織替えの情報は要チェックです。社内政治は大切です。

戻ってきてネットサーフィンをしているうちに、昼休みが近づいてきます。仲間と連絡をとって、早めの昼食です。楽しく歓談をして、社内の噂話や情報交換をします。腕時計を見ると、もう昼休みを過ぎています。ダラダラと歩きながらビルに戻ります。

眠くなった目を時々閉じながら、パソコンを見つめます。時々寝てしまうこともあります。こらえながら、受け持っているプロジェクトのWBSを更新します。エクセルはよく使いますが、四則演算やSUM関数くらいしか知りません。

 

当分、新しいプロジェクトの提案作業は無さそうです。今月も何事も無く、平穏に過ぎ去って行くことでしょう。「そろそろ業者との更新契約が迫っているなあ。今月末までに書類を準備して、承認申請を出さなきゃ」と心の中で呟きながら、ToDoリストを更新します。

それに併せて、客に出す見積書も作らなくてはいけません。開発費の値引きを執拗に求めてくるので、多少譲歩してやります。その代わりに、サーバーの売値は仕切値の倍にして差し上げます。

 

研修のノルマがあるので、受講リストの中からラクそうなものを選んで、申請を出しておきます。「場所は○○○か。ランチが楽しみだな。そのまま直帰してしまおう」と考えつつ、後学のために、ネットサーフィンをして情報を集めます。しかしまた眠くなってきます。通販サイトを見たり、株価や為替をチェックして睡魔と戦います。

打合せの時間が来たので、会議室に向かいます。気の知れた仲間だけなので、ワイワイ話しながら気分転換です。

執務室に戻ると、今度配属されると聞いた、新人の情報を確認します。「おっ、この子はカワイイな。早速食事に誘おう」と空想に耽ります。

 

そろそろ面接の時間です。あるプロジェクトに参加していた協力会社員が辞めたので人員を補充しなければなりません。現場は過酷なようですが、一度も行った事がありません。PLとなっていますが、ペーパー上の管理だけです。

この暑い時期に、来訪した営業も技術者も、クソダサいスーツにネクタイです。パッと見て、「こりゃ駄目だな」と思いつつも話を聞きます。ちょっと意地悪な質問をして、相手が困るのを見て楽しみます。この頃はロクな人材がいません。早めに切り上げます。営業からまた電話がかかってきたら、適当な事を言って断ろうと思います。

 

そうこうするうちに夕方になりました。17時を過ぎても、周りの様子を見ながら残業します。仲間からチャットで「飲みに行こうぜ。場所はいつもの所で」と連絡が入ります。「いくいく」と答えて、ソワソワと片付けをします。

安い料理と安酒で楽しい時間を過ごします。上司や、うるさい客の悪口を言って盛り上がります。もちろん、周りの人に気づかれないように隠語を使います。気分が良くなって、地下鉄の入り口まで皆でダベりながら向かいます。

「今日は何をやったんだっけ。いろいろ忙しかったような気がするけど、覚えていないや。まあ楽しければいいや。おっ、明日は20日か。もう給料日だ。特別に寸志が出たし、株の含み益もあるから、ボッテガのバッグでも買おうかな」と、楽しい空想にふけりながら家路につくのです。

 

IT企業の一次請けは半分ほど利益を抜きます。ちょっとした改修でも売値は1千万円単位です。そのあと、何重もの下請け業者を経ていきますが、末端になると数パーセントくらいの利益率しかありません。当然赤字になる危険性もあります。それぞれの取引に消費税もかかってきます。

中抜き企業は、ヒト・モノ・カネを、右から左に、あるいは左から右に動かしているだけです。それだけで札束がドサドサッと落ちてきます。

社内は縦割りです。部署が違うとまるで別会社のようです。横のつながりはありません。自分の縄張りには敏感です。おいそれと、相談したり仕事を頼むこともできません。

 

最近はプロジェクトの規模が小さくなってきたので、複数のプロジェクトをかけ持ちです。見積もりを出して契約書を交わし、下請けに丸投げです。

顧客が要求するスキルセットを持つ業者を探してくるだけなので、最新の技術動向を知る必要さえありません。怠けようと思えば、いくらでも怠けられます。

 

仕事は親会社から降ってきます。会社のブランドがあります。資本金も潤沢です。仮に、1年以上売上が無くても、組織を維持していけます。親会社を頂点とした巨大なピラミッド構造となっており、グループ全体で、ヒト・モノ・カネが大きく動いていきます。国会議員も送り込んでいます。官僚の天下りも受け入れています。グループの力で世論を動かすことができます。

 

日本は既得権益に寛大です。「政官財のトライアングル」を構成している巨大な組織の一員となれば、一生安泰です。底辺層を食い物にして生きてゆくことができます。ガン細胞のように増殖し浸潤していきます。不死身の存在です。

いざとなれば官が助けてくれます。赤字が続いても、金融機関を通して融資を続けてくれます。リスクを取りに行く必要はありません。イノベーションなどは不要です。何をやるべきかは、官が決めてくれます。上の意向に従えば間違いはありません。研究所の人員は大幅に整理しました。共産主義にかぶれた危険な連中です。

 

日本企業は永遠に不滅です。いざとなれば神風が吹きます。命令一下で一斉に動く巨大な軍事的組織、そして根拠のない楽観主義、これこそが日本の強みなのです。

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チャヴ 弱者を敵視する社会

格差は心を壊す 比較という呪縛

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