YouTubeが処分を発表した例のユーチューバーですが、彼はなぜ日本を嗤(わら)ったのでしょうか。もちろん彼のやっていることに対して怒り非難し行動を起こすのはいいのですが、嘲笑するにはそれなりの理由があったはずです。動画が削除されても、そう感じた人々がいたという事実は無くなりません。理由を考えることによって逆に我々が学べることもあるでしょう。
事の発端は、青木ヶ原樹海で自殺体を見つけて笑って冗談を言っている動画でした。これを冷静に振り返ってみましょう。世界でもっとも有名な自殺の場所として知られる「青木ヶ原樹海」というのがあって、そこに行ってみたところ、案の定、首吊り死体が見つかったといものです。
自殺で有名な国に、世界的な自殺の名所があって、そこに行くと首吊り死体がぶらさがっている。これがどんなに異常なことか考えてみてください。日本人なら樹海を知っているのは当たり前ですが、世界的にも1、2位を争う程有名な自殺の名所だということを知らない人は多いかもしれません。
さらに世界の自殺の名所は、大抵、滝や断崖絶壁、巨大な橋で、素人が簡単に投身した遺体を見つけられるものではありませんが、樹海は中に入って根気よく探せば、死体がぶらさがっていたり、転がっていたりします。いくら自殺が多いとはいえ、遺体がそのままになっているというのも異常ではないでしょうか。
自殺が多いということが分かっているのに、行政は何の対策もせず、惨めな死体がブラブラ吊るされたまま、回収されるということもない。ボランティアが積極的に何かしたり弔うこともない。遺族が探しに来るということもない、このような人間の尊厳に対する軽視や無関心が具現化されている場所が「樹海」なのです。
もとより人権軽視の国なので勝手に死んだ者などどうでも良いということでしょうか。電車が雪の中長時間止まっていても、何の対策も考えられなければ、中で苦しんでいる人達に対しても何も感じない、それと共通するような日本人の動きの悪さと冷たさを感じます。
要するに、(1)樹海が観光名所となっている、(2)日本人はすぐに死にたがる、あるいはそういった異常な環境に住んでいる、(3)自殺体がごろごろしていて、日本人はそれを気にもしていない、それが真実がどうかはともかくとして、そういった人間を軽視するおかしな日本人というイメージを嘲笑っていたのです。観光立国を目指す日本ですが、皮肉にも「樹海」が日本らしい観光名所のひとつとなっていたわけです。