kurukuru89’s blog

主に原始キリスト教、哲学、心理、日本人について、気の赴くままに語ります。知識ではなく新しい視点、考え方を提供したいと思っています。内容は逆説的、独断的な、投影や空想も交えた極論ですが、日本人覚醒への願いを込めたエールであり、日本の発展に寄与する事を目的とします。(ここで言う日本及び日本人とはあたかもそれらを代表するが如く装うが、理性が未発達な為、感情的に動き、浅薄な信条に左右され社会に仇なしてしまう集団や人々を主に指しています)これらを通して人間に共通する問題をも探り散文的に表現していきます。

964ターボ(3.3)というクルマ

964ターボ(3.3リットルモデル)はポルシェが1991年に販売開始をしたフラッグシップモデルです。92年までの短いモデルでした。964ターボは評価が難しいクルマです。

 

930から964への移行に伴いボディは大幅な刷新がなされています。従来のフレーム構造を含むセミモノコックから、フルモノコック構造へと変わったのです。剛性も上がりました(ちなみに930のボディ剛性はかなり緩いです。しかしクルマが捩れてもしなやかで予測可能な動きをしたのであまり問題では無かったのです)。

ブレーキも930ターボと比べて遥かに安定しており強力です。ペダルは相変わらず重いので超高速域からの急制動時には蹴るようにしてペダルを踏みます。その時、まるで周りがいきなり逆方向へ動き出すように感じます。

 

それ以外にもパワステやABS、オートエアコン、セキュリティシステム、メータ内オンボードコンピュータが備わったように時代の要請に合わせて装備も一新されました(エアコンは相変わらず効きません)。それでいて思っていたより故障が少ないクルマです。

このように、930と964は同じカエル顔のボディを持ちますが中身はかなり異なります。

足回りも従来のトーションバー・サスペンション(棒バネを利用したものでダブルウイッシュボーンと同じ理想的な動きをしますがストロークに余り余裕がありません。その代わり構造が簡単でコンパクトに収める事が出来ます)からスプリング・サスペンションへと代わりました。

 

さてカレラ4、カレラ2に続き新しいターボが発表されたのですが、なんとエンジンは先代のものをそのまま載せて来たのです。相変わらず機械式インジェクション(Kジェトロニック)のままですし、排気量も3300ccのままでした。カタログパワーだけは僅かに20馬力上がって320馬力となっていました。

この頃のポルシェは経済的に苦しい事もあり十分なターボ用エンジンを用意する事が出来なかったのです。(当時は倒産寸前ともいわれました。バブル期日本での売上がポルシェの救いになったのは本当のことです)

 

それでも総合的に速くなるように仕上げて来たのは流石にポルシェです。とはいえ乗り味が大分異なります。

964は4WD用のシャフトを通す為に共通ボディが腰高になっています。重心が高くなったわけです。加えてトーションバーと比べてサスペンションは上下方向にゆっくりと大きく動きます。ゴーカートのように鋭く回転する930ターボとは大分フィーリングが異なるのです。

 

また1989年のモデルを除いてそれまでのポルシェターボはマニュアルの4速ギアでした。2速で150kmまで出るので街乗りでは変速がほぼ不要です。しかも一瞬周りの動きが止まったように感じられる息の長い加速を楽しめたのです。

しかし964ターボでは5速マニュアル仕様となりました。確かに理論上は5速の方が加速は良くなります。けれども信号発進の度にドライバーが乱暴なシフトワークを繰り返している訳ではないのです。頻繁なシフト操作は面倒でもあります。下手をすると遅くなります。さらに930ターボと比べて20馬力上がっても重量は100kgほど重くなってしまったのです。息の長い加速感はなくなりました。要するに日常での加速は930と比べて964ターボの方が遅かったりするのです。乗るとがっかりするクルマです。

 

そのうえ930ターボではウエストゲートにワッシャーを入れてブーストアップ(340馬力前後になります)している所有者も多かったのです。だから乗り換えると余計に遅く感じたのです。(ちなみにブーストアップには経験あるメカニックによる燃圧・燃調・点火タイミングの複雑な調整と実走行確認が絶対に必要です。私も正規ディーラーでベテランのメカニックに直接頼みました。専門店を謳う所でも分かっている人は極少数でした)

 

とはいえ964ターボとなり格段に乗り易くなりました。挙動は良い意味でポルシェそのものです。それでいて930ターボのようにブレーキ操作で簡単にスピンモードへ移る事がありません。乗り心地も若干良いです(リアエンジン・レイアウトなので限界がありますが)。930ターボと比べて超高速域でも安定しています。

しかしそこが面白くありません。このままでは飛ばす気にもなれません。「危険と隣り合わせなのがポルシェターボなのに…」と思ってしまうわけです。(もちろんそれはメーカーが意図したものではありませんでしたが)

 

964でも硬派なモデルが幾つかあります。そのうちのひとつが964RSです。自然吸気ですが徹底した軽量化とレーシーなチューニングを施したものです。「筑波サーキットでは別格の速さだった」という神話で日本でも人気があります。(ちなみにポルシェターボはサーキットを走行するスポーツカーではなく、飽くまでハイウェイを疾走する「GTカー」です)

しかし他の964と比べて大変スピンし易いモデルです。サーキットのように路面が安定している事が条件で、運転の基本動作を忠実に守らないと直ちに破綻するクルマです。失敗したらリカバリが効きません。常に限界ギリギリの領域で動かす事を求められるクルマなのです。実際に所有していた人を3人知っていますが、全員スピンを経験しています。それも交差点でです。

 

この後のポルシェターボの展開ですが、同じくタイプ964の3.6リッターモデルでは電子制御インジェクションとなってしまいます。メカニックが手を入れる余地が少なくなりました。

タイプ993ではツインターボの4WDとなります。まるでスバル・インプレッサ(あれはあれで好きなクルマです)みたいな乗り味です(所有している人の中には、シングルタービンに換装し2WDにして乗っている人もいます)。

タイプ996となるとターボのエンジンが空冷ブロックベース(空冷と水冷の混合構造)となり複雑化し故障が頻発しました。

 

強いて言えば、未完成な964ターボ(3.3)こそが最後のポルシェターボと言えなくもありません。これ以降、ポルシェターボのようなクルマは、GT2でしか味わえなくなってしまったのです。
(了)

(シャーリーズ・セロンさん主演の「アトミック・ブロント」の1シーンです。964ターボが登場します。リアのヨタヨタした動きが良く分かります)

(964ターボ(3.3)による大変珍しいニュルブルクリンクの走行動画です。当時のNSXやGT-Rの素直な動きと比べてもサスペンションの動きが無駄に大きい事が分かります。それでもNSXやGT-Rより良いタイムが出ているのはポルシェならではです)