ダイヤトーンのDS−1000HRは、1990年代から2000年辺りにかけて販売されていた三菱電機のスピーカーです。
このスピーカーには、同時代の他日本製品と同じように販売価格に見合わない多大なコストが掛かっています。正規販売価格はペアで26万円程度ですが、当時は値引きが当たり前だったので20万円前後で手に入ったのです。
片方だけで30kg近い重さがあります。ユニット全体を支える頑丈な鋳物製フレームと、高剛性のキャビネットによるものです。ウーファーにはハニカム構造のポリアミドが使われており、軽量化と高剛性の両立を目指しています。ツィーターとスコーカーにはダイヤモンドに次ぐ硬度を持つボロン化チタンが使われています。クリアで素早い立ち上がりの音を実現できます。
このスピーカーの音は独特です。前に飛び出して来るような鋭く硬い音です。華やかな高音が空間にキラキラと広がるような印象があります。ただし暖かみの無い音です。このスピーカーの後継機種もありますが、より自然で馴染みやすいサウンドとなりました。その点で唯一無二と言えます。
欠点はドライブ能力の高いアンプを要求されるという点です。当時のアンプならばサンスイのAU−α907Extraです。このアンプも30kg以上の重量があるコストの掛かったアンプです。力強く暖かみのある低域が、補い合う関係となります。いっぽうで性能の低いアンプでは、まるで空き缶が鳴っているかのような酷い音になります。このスピーカーの欠点ばかりが目立ってしまいます。
けれども良いアンプと組み合わせれば、透明感のある澄んだ高域と音の鋭い立ち上がりを堪能出来ます。何物にも代えがたいものです。特にピアノ曲や弦楽四重奏曲の再生は素晴らしいです。J-POPも良い感じです。合わせるアンプは、マッキントッシュも良いですが、アキュフェーズのセパレートアンプのように低歪のアンプと組み合わせれば、昔の古い録音を綺麗に聴くことが出来ます。
このスピーカーから出てくる音は、実際の生音とは似ても似つかないものです。しかし印象的な音であることは確かです。所詮、原音再生などは無理な話です。そうであれば単に音が気に入るかどうかで評価すれば良いのです。
プレーヤーは音の情報量を決定し、アンプは音の質を決めます。そしてスピーカーは音の性格を大きく左右します。つまり、プレーヤーとアンプについてはある程度価格の高いものを入手すれば間違いありません。ですがスピーカーだけは自分の好みに合わせて決めなければいけないのです。
現代ではオーディオの重要性は低くなっています。しかしながら音楽のある環境は大切です。特に幼少期です。一番良いのは生の音に触れることです。可能ならコンサートに連れて行くのが良い方法です。楽器を与えるのも良い選択です。ただし生で良い音が出る楽器に限ります。そもそも単音を鳴らしてみて良い音と感じないのなら、音楽への興味を失ってしまうでしょう。それでは音楽教育が、楽譜を読み指を動かすだけの訓練となってしまいます。
いろいろな事情でそれが叶わぬのならオーディオ機器を備えるのが次善の策となります。良い音が聴けるオーディオがあれば世界が広がります。