フランスのピアニスト、エレーヌ・グリモーが、久しぶりにグラモフォンから新譜を出しました。寡作ですが彼女が出すアルバムには、選曲にこだわりがあり、一種のコンセプトアルバムのようになっています。アルバム毎にエレーヌの強いメッセージが込められているのです。
今回のアルバムの名前も「The Messenger」です。時代の隔たりや作曲家の枠を超えた自由な選曲です。アルバムのブックレットには、いつもエレーヌ自身が書いた文章が載っています。確かな知性を感じさせる読み応えのある文です。エレーヌの両親は大学教授で、本人も知的な人ですが、強迫性障害を患っている事をカミングアウトしています。人付き合いも苦手な様です。しかし彼女の弾く曲には、独特の感性と情熱が感じられます。
今回の新譜では、モーツァルトのピアノ協奏曲第20番が採り上げられています。聞きなれた曲ですが、力強く情熱的で、まるでベートーヴェンのように聞こえます。余計なタメが無く流麗です。録音はエレーヌによる弾き振りです。笑顔でのアイコンタクトがいいですね。心から音楽を楽しんでいる様子が伺えます。動画を見ると、オーケストラの面子も、彼女にインスパイアされて演奏しているのが良く分かります。5分過ぎたあたりから始まるカデンツァも見逃せません。
知性と感性を両方備え、自分のやっている事を言葉できちんと説明できる人は音楽家の中でも希少です。
Hélène Grimaud – Mozart: Piano Concerto No. 20 in D Minor, K. 466: III. Rondo. Allegro assai
I was always interested in couplings that were not predictable, in unusual combinations, because I feel as if certain pieces – even sometimes pieces by different composers – can shed a special light on to one another.#Themessenger https://t.co/bCrogpeTe9
— Hélène Grimaud (@HeleneGrimaud) September 15, 2020
Photo: MAT HENNEK pic.twitter.com/L7NW0Xnkhw