「心のカゼ」と称され、簡単にうつ病と人々が診断されるようになり、抗うつ薬も気軽に処方される時代となりました。この抗鬱剤について少し見てみましょう。
抗鬱剤として日本で主に使われているのはSSRIや、三環系ですが、これらはどちらも脳内の伝達物質であるセロトニンの効きをよくすることを狙ったものです。ところが抗鬱剤を使って脳内のセロトニンの効果を高めようとすると、今度はドーパミンが相対的に減ってしまうことがあるのです。アセチルコリンとドーパミンの関係ほど明確に認識されてはいませんが…。
ドーパミンは、やる気や、強い感情に関係する脳内伝達物質です。美味しいものを食べたり、好きな事に興じようとしたりするときに放出されます。ただし増え過ぎると興奮性が高まり、ついには幻覚や幻聴が現れます。セロトニンの方は落ち着いた喜びや心地よさが得られる脳内物質です。
抗鬱剤の処方で、却って希死念慮を増幅させてしまうことがあるのは、このドーパミンの減少が関係していると思われます。
精神病の治療において、ドーパミンの抑制やセロトニンの効果が重要視されたのには訳があります。効きの良い化学合成の治療薬が開発されるまで、精神病院の主な役割は、興奮する患者を押さえつけておくことでした。ドーパミンをカットする抗精神病薬(メジャートランキライザー)は強力な精神安定効果があり、暴れる患者を安静にするのに有効です。いわば拘束着の代わりとなるのです。セロトニンの効果を強化するクスリも、患者を落ち着かせる方向に働きます。簡単に言うと、ほとんどの向精神薬は、頭の動きを鈍くすることによって患者を安定させるという効果を狙ったものなのです。
また、欧米人の場合、ドーパミンの分泌が比較的多く、反対にセロトニンが少ないという傾向があります。日本人は反対で、落ち着き過ぎる反面、強い感情が見られない傾向があります。これが麻薬の嗜好にも表れているようで、欧米ではダウナー系の麻薬が好まれ、日本ではアンフェタミン、メタンフェタミンなどのアッパー系の麻薬が好まれると言われています。それだけ日本人はドーパミンに飢えているのかもしれません(笑)
話を戻すと、落ち込んでしまっている日本人の治療にあたっては、個人差はありますが、セロトニンを増やすというより、少なくなってしまったドーパミンをどう増やすかという所から考えた方が良いのです。特に遺伝的に落ち込みやすく、これといったストレス要因が見つからずにやる気を失っているような人です。ところがこういった人達は統合失調症の陰性症状と見られて、抗精神病薬や、非定型抗精神病薬を処方されてしまうことがあるのです。
以前、ドーパミンの効果を増やす、メチルフェニデート(リタリン、コンサータ)というアンフェタミンやドーパミンに構造が良く似たクスリがうつ病でも処方されることがあったのですが、依存性があるという事で処方対象と量が厳しく制限されるようになりました。今では、うつ病で処方されることはありません。
ということで気分が落ち込んで心療内科や精神科に行った場合、まず間違いなく、一般的な抗うつ剤を処方されると思いますが、それが却って症状を悪化させる可能性もあるのです。
しかし良い子の皆さんは、こんなネットのブログに書かれている事なんか信用しないで、TVでお医者さんが繰り返し語る言葉をよく聞いて、それに忠実に従ってください(笑)