映画における格闘シーンは非現実的で誇張されたものですが、興味を惹かれる点もあります。映画「ジョン・ウィック:チャプター2("John Wick: Chapter 2 ")」ではキアヌ・リーブス演じる主人公と敵の女性とが闘うシーンがあります。これだけ体格差があると勝敗は明らかですが、女性はそれなりに理にかなった戦闘をしています。
敵が持っている武器はタガーで、軽く体力の消耗が少なくて済むこと、握り込めて落とす心配が無いこと、さらにボクシングと同じ要領で使えるのがメリットです。質量が無い分をスピードで補います。相手に休む暇を与えないように両腕を繰り出していますが、掴まれて投げられたり、組み敷かれた時点で本当はアウトです。結局、大振りしたところで動きを読まれて戦いに敗れています。
北方のヴァイキング("Viking")は斧を振り下ろすようにして使いますが、破壊力は相当のものがあります。使いこなせる体格があれば威力を発揮する武器です。薩摩の示現流も破壊力に重きを置いた刀の使い方です。斧ほどの重さはありませんが素早く振り下ろすことで威力を高めています。日本刀はかなりの技術が無いと使いこなせませんが、これならば技術はそれほど関係ありません。
刀は当時の戦場においても決して妥当なものとは言えず信頼性が高い武器でもありませんでしたが、武士にとっては一番身近な武器でした。示現流では相手の出方を探るようなことはせず、最初からもっとも効果的な打撃を試みます。当たれば一発で相手を倒せますし、そうでなくても戦闘能力を相当奪うことができます。そうして次の相手に向かうことができるのです。1対1で終わる試合等ではなく、実際の戦場で刀を使って次々に1対1の戦いを繰り広げていく為には、体力の消耗が結果的に一番少なく、技量に長けていなくても勝つ可能性の高い合理的な方法だったのです。刃こぼれしたり、曲がったり、切れなくなっても、上から打ち下ろす攻撃には相当の威力があります。例えばレマルクの「西部戦線異常なし("Im Westen nichts Neues")」でも塹壕戦においてシャベルを振り下ろして相手を戦闘不能にする描写があります。
最後に映画「96時間("Taken")」での駆け引きを含む戦い方です。人身売買組織に娘を誘拐された元CIAの主人公が犯人を追う際に、フランス内務省に勤める友人が組織と関係していたことが分かり、情報を教えるように交渉する場面です。ここでは相手に選択肢が無いことを説明した上で役人ではなく妻の腕を撃っています。酷いことをしているようにも見えますがとても合理的な方法です。妻を撃たれれば政府の機密情報を教えたとしても言い訳ができます。関係者だけでなく自分自身に対してもです。ところが自身が脅されて喋ったとなるとそうはいきません。となると死んでも口を割らないという事も考えられます。この主人公は最小限の行為で目的を達成する極めて合理的な手段をとったのです。
優雅な動きや紙一重の差で勝つというのは演武やスポーツならいいかもしれませんが、現実にはパワーが重要です。技量や優位に立つ為の駆け引きはその後です。戦いにおいてだけではなく、持って生まれた能力以上のものは小手先の技術や努力では発揮しようがありません。ですから短い生涯において、自分の才能、力量を出来るだけ早い内に見極める事が重要になってきます。
John Wick vs Ares / Hall Of Mirrors | John Wick Chapter 2 (2017) Movie Clip - YouTube
(John Wick: Chapter 2 1:40から)
Taken - Bryan at Jean Claude's - YouTube
(Taken 1:28から)
[ Vikings ] Shield Wall - Battle (HD) - YouTube
(Vikings)