人間は人生において様々な問題を解決することを求められています。外部の問題だけでなく、人間には無意識があり、問題に対して適切な解決をしなければいろいろな異常行動や身体症状となって自分を困らせます。
矛盾や葛藤を経験する時、人々は防衛機制で自分の心を守ろうとします。すなわち、人間は事実を自分の都合の良いストーリーに作り変えて記憶してしまうのです。これが人々がウソをつく理由のひとつです。
これを見事に映像で表現したのが、黒澤明監督の「羅生門」です。ひとつの事件が4人の証人によって、まったく違う話として語られます。法廷における損得勘定からではなく、それぞれの心理的葛藤の解決の結果として、証人それぞれのストーリーが出来上がったのです。
このようにウソをつくのは、人間が「問題を解決する」という試練を人生において課せられているが故に、いわば必然といえるような行為なのです。