シューベルトという人は変わっています。
率直に自分の思いの丈を音楽で表しています。それは必ずしも音楽的表現として妥当なものではなかったと思いますが、彼はたぶん、有名になりたいとか、深遠なものを表現したいとか、感情をぶつけたいとか、はたまたモテたいとか、そういった動機よりも、むしろ近しい人に語りかけるように、純粋に自分の繊細な心の動きを表現したかったのだと思います。
楽譜で書かれたそういった楽曲が古典として残り、今でも作曲者の心を生々しく伝えるというのは凄いことです。シンプルな音楽で、無骨なまでに心情を吐露すれば、時に陳腐になったり、聴衆を辟易させてしまうきらいはありますが、てらいも気取りも無い、その生き生きとした表現は、ストレートに聴く者の心に伝わってきます。