トヨタは庶民向けに低い次元でバランスされた、魅力のない大衆車をうんざりするほど作ったかと思うと、トヨタ2000GT、AE86(カローラレビン、トレノ)、初代MR2(AW11)、スープラ(A80)、トヨタ86、レクサスLFAなど、価格帯にかかわらず、面白いクルマも時々作るメーカーでもあります。こういった魅力があるからこそ、多くのクルマ好きにもそっぽを向かれずにいるところがあります。
これを可能にしたトヨタの強みを考えてみると、トヨタの主査が、カネと開発の両面において比較的自由な裁量権を持っていることがひとつ挙げられると思います。言わば理想的なプロジェクトマネージャと言えるのです。ですからその層毎に第一級の性能を備えた個性的なクルマを作ることができるのです。
しかしそのトヨタにも凋落の兆しが見えています。果たしてトヨタはこれを回避できるのでしょうか。
まずひとつ、自動運転が可能なこれからの電気自動車というのは、今までの自動車の延長線上で考えてはいけないということです。全く別物の輸送手段であり、巨大なモバイル端末だからです。
ですので自動車メーカーも、旧来のガソリン車やハイブリッド車とは、まったく別物として扱うべきで、思い切って別会社を作ったほうが良いのです。巨艦では小回りが利きません。ガソリン車を作る親会社はどんどん衰退していくでしょうが、新たな子会社は主軸となるでしょう。そこでプロジェクトマネージャのセンスを生かしたモノづくりをするのです。
次世代の自動車は、IT、AI、通信、科学、数学、工学の最先端の知見や技術が結集されたものになります。その為、自動車メーカーも最先端の巨大な総合研究所を整備する必要があります。M&Aやカネで世界中からアイデアや技術を買うという手もありますが、それではいつまでたっても後塵を拝するでしょう。上手く育てれば日本を代表する研究所となります。
またお金がかかりますが、世界中で動いている自社のクルマに、各種センサーを備えた最先端の運転記録装置を無料で配布するというのもいいでしょう。情報をうまく集められれば、貴重なビッグデータとなり、それは財産となります。
このように自動車メーカーも、巨大IT企業のようなものに変わっていく必要があり、それを認識し実行できたものだけが生き残っていくことでしょう。