「ブラッド・スローン("Shot Caller")」という映画があります。主人公は交通事故がきっかけで収監され、生き延びるためにギャングの一員となります。一旦その地獄に嵌ってしまうと、刑務所を出たとしても、常に囚人を束ねる支配者の影響下におかれ、逃れる事はできません。しかし監獄に戻り、力を持ってその王座を勝ち取れば、終身刑となっても何不自由無く暮らせるようにはなるのです。この世に、刑務所という地獄があり、さらにその中にもっと過酷な地獄があるというわけです。
確かめようもありませんが、理想の世界が何処かに存在する一方で、流刑地や刑務所に相当するのがこの世界なのかもしれません。我々は以前の記憶を一時的に消されて送り込まれた囚人というわけです。そしてこの世で決められた刑期、あるいは何らかの課題を達成しなければならないのです。よく言えば「修行」です。
もし、この物理世界で王座を得られれば、物質的な安定を得ることができ、また、未知の世界と通信できる方法も手に入れられるのかもしれません。しかし多くの人は長い人生を苦しみながら生きねばなりません。赤ん坊の頃は笑っていられても、年を経るにつれて楽しみは少なくなり、人生のほとんどを働いて過ごし年金を貰える頃にはボケていたり寝たきりだったりします。
かといって、この世界から逃亡を試みた場合、生まれ変わっても、下位の地獄に送り込まれ、そこで再び間違いを犯すとさらに下位の地獄に行くという可能性もあります。反対に、この世を卒業しても、結局は、上位の多少ましな地獄に移るだけなのかもしれません。幸いなのは、我々は前世の記憶をリセットされるということです。
人間よりも動物の方が、まだ幸せなのかどうかは難しい問題ですが、少なくとも今のような文明は無かった方が良かったかもしれません。世界を荒廃させずに、合意の上で人々が文明を捨て去る時期を待たねばなりません。
あるいは、この収容所を強制的に終わらせる、たったひとつの方法は、地球を破壊して全ての有機生命体の命を奪うことかもしれません。そうすれば囚人がこの世に繰り返し生まれてくるという連鎖を断ち切ることができます。それは我々全員が上位の刑務所に移るだけの事に過ぎませんが、少なくとも理想世界に戻る一歩となるでしょう。それとも、まとめて地獄に落ちてしまうのでしょうか(笑)