kurukuru89’s blog

主に原始キリスト教、哲学、心理、日本人について、気の赴くままに語ります。知識ではなく新しい視点、考え方を提供したいと思っています。内容は逆説的、独断的な、投影や空想も交えた極論ですが、日本人覚醒への願いを込めたエールであり、日本の発展に寄与する事を目的とします。(ここで言う日本及び日本人とはあたかもそれらを代表するが如く装うが、理性が未発達な為、感情的に動き、浅薄な信条に左右され社会に仇なしてしまう集団や人々を主に指しています)これらを通して人間に共通する問題をも探り散文的に表現していきます。

ベートーヴェンの隠れた傑作、弦楽五重奏(作品137)

ベートーヴェンが1817年に書いた、「弦楽五重奏のためのフーガ」(Op.137)は、2分少々の小品ながらも味わい深い傑作です。

 

交響曲第8番」(1811年)と「交響曲第9番」(1824年)の間、そして「弦楽四重奏曲第11番(セリオーソ)」(1810年)と「弦楽四重奏曲第12番」(1825年)の間の、長い空白期間のちょうど中間あたりに作曲された曲です。

 

この作品は珍しく、弦楽器による五重奏で演奏されます。(1)第一ヴァイオリン、(2)第二ヴァイオリン、(3)第一ヴィオラ、(4)第二ヴィオラ、(5)チェロという構成です。

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曲は、短いながらもソナタ形式になっています。まずは典型的なフーガから始まります(0:06から)。(1)-(2)-(3)-(4)-(5)と5つの楽器で機械的な第一の主題が演奏されたあと、また第一の主題が繰り返されると思いきや、嘆きのような下降する短い第二の主題が、(1)-(2)-(3)の順で演奏されます(0:38から)。

 

そのあと、(1)-(5)-(4)で第一主題を思わせるような音型に続いて、曲は自然に無理なく展開部に入り(1:11から)、(1)、(2)の高音域パートと、(4)+(5)の低音域パートの間でフーガのかけ合いが行われます。

 

再現部では(1:41から)、第一主題が、最初よりもさらに高い音域で演奏されて、ドラマチックな感じを与えます。これが(1)-(2)-(3)-(4)-(4)+(5)と短い時間で弾き継がれた後、突然、全ての楽器がff(フォルティシモ「非常に強く」)で鳴り、ヴァイオリンが第一主題をもとにした、強い叫びを思わせる旋律を奏でます(1:56から)。

 

そしてすぐに終結部に移り(2:02から)、第一主題と第二主題、そして第一主題の断片が演奏されて、あきらめを感じさせるように静かに曲を終わります。短くても心を動かされるような劇的な構成になっています。

 

自由で複雑な形式、そして陰鬱さを加えていった後期作品群の先駆けとなるような、小品ながら構成感があり、劇的で強い感情も表現されている、後期ベートーヴェンの魅力が凝縮されたような作品です。